FIXING OR ABUSING?

蒼と靄

眼下に広がる青い惑星をモニタリングし始めてどれくらいの月日が経っただろう。
もう随分と星の様子とそこに暮らす生命を観察しているように思う。
このところ大きな変化があったので記述しておくこととしよう。

―モニタリングの対象を「地球」と言う。沢山の生命が暮らす、豊かさに溢れた星だ。

その豊かさの一方で常に淀んだ靄(もや)のようなものに覆われていた。ところが地球の単位で1年ほど前、ヒトという生物が唐突に動きまわることを止めその往来や活動が激減した。

するとその靄が薄れ、澄んだ空気が流れ始めたのだ。

調べてみると、この変化が起きた時期、地球全体とも言える規模でヒトの生命を脅かす問題が起こり、外出や往来のみならず経済活動をも止めざるを得なくなったらしい。こんなことは長年見守ってきたが初めてのことだ。ヒトが視界から消え、昼夜問わず轟音を鳴らしもうもうと立ち昇る煙を吐き出す工場が停止し、ガスを排出する車という乗り物も減少した。特に休むことなく化学物質を煙として放出していたエリアは、上から見ると一目瞭然に変化が見られた。何か別の星を見ているのかと勘違いをしたほどだ。

ヒトの経済活動や車を使用した移動がこの空気の淀みを作り出していたのだろう。地球に住むその他の生物も変化した星をとても歓迎していた。視界がクリアになるとこれまで見えていなかった豊潤な土壌や大きな緑が見えてきた。本来この星はここまで瑞々しいことを知り、今まで見てきたものとの落差に唖然とした。世界規模で活動を制限する事でここまでわかりやすく大気の淀みが解消されるということは非常に興味い。

大気を日々取り込んでいるヒトにとって、それが汚染されているということはすなわち、生命を脅かすことのはずだ。実際に有害物質により命を失うヒトの数は夥しい数に上る。しかし、それでも経済活動や利便性の高い移動手段をやめられないのだろう。しばらく中断していたヒトの往来や全ての活動はある箇所では徐々に、また別の場所では一気に復活した。するとやはり淀んだ靄もまた侵食するかのようにジワジワと惑星を覆い始めた。ヒトは科学で進歩してきた生物のはずであるから、きっとこの事実を正確なデータで捉えているだろう。ただ、今後何を選択するかはわからない。環境や自分たちの暮らす世界を末永く継続させることと、ヒトが経済的に発展していくことは同じくらい尊ぶまれるからだ。「地球にとって良いこと」=「正しいこと」として未来を選択するほどこの生物はシンプルでいられないのだ。
さらにこの淀みを増やすのか、裏打ちされた此度の事実に基づき淀み薄めるのか、はたまた持てる科学力と日々の研鑽により全く別の解消法を見つけるのか。この興味深い星とそこに君臨するヒトという生物の選ぶ未来を辛抱強く観察し続けたいと思う。

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2020年のロックダウン措置などにより 8割以上の国で大気汚染が軽減。

PM2.5濃度の低下が最も顕著だった都市は、期間限定の厳しい行動制限を実施したシンガポール、北京、バンコク。

*CNN / IQAir 調べ

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Director & Photographer HIDEYUKI HAYASHI

Director of photography TAKUMI KISHI

Starring SAYA BELLAMY

Hair Stylist HIROKI KITADA

Make Up Artist YOUSUKE TOYODA

Text KIE KAJINO