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確かに存在している「存在するはずのない子供」

想像できるだろうか。先進国の多くでは身近ではないであろう「存在するはずのない子供」という概念。現在世界では複数の国、エリアにおいて「生まれたことを公的に認められていない子供」が存在する。そしてそのまま大人になる者も多くいる。出生届が出されていないのである。それはすなわち「国籍がなく、受けられるべき法の保護や政策の対象にならない」ということに他ならない。


世界(174か国)では5歳未満の子どもの4人に1人に当たる1億6,600万人が出生登録がなされていないという。その多くはアジアおよびアフリカにおり、未登録児の87%が南アジアおよびサハラ砂漠以南のアフリカにすんでいるのが現実だ。最も出生登録率が低い国であるエチオピア連邦民主共和国ではなんと約3%。他にもザンビア共和国やチャド共和国も11~12%という状況だ。自分の身元を証明できない。そんな状況が身近にない環境にいるとその恐ろしさは想像もできないかもしれない。しかしもっと悲劇と言えるのは「存在するはずのない子供」であること自体が大きな損失であり搾取の対象であるという事実をも知らないのが当の子供とその家族という事だ。受けられるべき保護やサービスの価値を認知できないその現実こそを重く捉えるべきだろう。

出生登録されない理由の多くは下記に分類できる。


「子どもの出生登録方法に関する知識の不足」


「出生登録または出生証明書の申請料金の高さ、登録が遅れた場合の追加料金」
 

「最寄りの登録施設までの遠さ」
 

「一部のコミュニティでの伝統的な慣習(子どもを産んだばかりの母親は屋内にいるべきなど)」
 

つまり情報や知識の欠如または不足、家庭の財政状況、そして交通網などのインフラ、国やエリアによる伝統的な考えによるものなどが原因ということだ。これは確実に国家の問題であり、家庭単位で抱えられる範疇ではないと言える。

2015年9月、国連サミットは「持続可能な開発のための2030アジェンダ」のSustainable Development Goals (SDGs)の中で「2030年までに、すべての人々に出生登録を含む法的な身分証明を提供する」という目標を全会一致で採択した。2030年にはすべての人間に法的身分を与える世界を作ろうとしているのだ。当たり前に取得できると思われている運転免許証、パスポート等、公共の身分証を世界中の人々に行き渡らせることができる未来へ。この目標は最たる「公正・公平」へと続く根幹的な「世界の問題」だと思わないだろうか。それでも冒頭で述べた通り、億単位で出生登録されていない子供を0にする作業は簡単ではない。何せ出生登録されない理由を抜本的に解消するためには先述の通り、国や地域そのものの発展やインフラの充足、知識・情報を個々の家庭に行き渡らせることが必要不可欠だからだ。

この問題と世界はどう向き合えばよいだろう。生まれた国が違っていたら、自分は「存在する子供」でいられただろうか。法的な身分証明書なしで享受可能な公共・民間のサービスが一体どれだけ少ないことか。戸籍を持ち、身分証を取得し、政治に参加し、「いることが当たり前の人間であること」。これらの現実を失ったとき、自分の生活はどれほど瓦解し根底から変化するのか。イマジネーションを膨らませ「自分事」にしてみたい。世界中のすべての子どもたちが出生登録されることが当たり前になる日が1日も早く実現されるためには、祈るだけでは足りないだろう。